K & S Associates

川島 & スワンモントリー アソシエイツ

วิเคราะห์สถานการณ์เครษฐกิจ สังคม และการเมืองเอเชียเป็นภาษาไทยด้วยมุมมองจากญี่ปุ่น สำหรับคนไทยโดยเฉพาะ

世界の警察官を止め始めたアメリカ アジアのことはアジアが決める時代へ

 アジアの近代は西欧列強との戦いで始まった。タイも日本もその例外ではない。ラーマ4世の治世と日本の幕末は重なるが、両国にとって西欧が進出してくる中で独立を確保することは大きな政治課題であった。それから150年ほどが経過したが、いまでもアジアの安全保障は米国なしに語ることができない。タイにとっても日本にとっても、米国は安全保障の要になっている。

 今、そんな時代が終わろうとしている。米国のオバマ大統領はシリアに武力行使するとしたが、その最終判断を議会に委ねた。その議論は、「延長を含めて90日間だけ武力行使を認めるが、地上軍は派遣しない」と言う線で決着しそうだ。

巡航ミサイルと艦載機を使って爆撃するだけだと報道されている。艦載機はシリアがロシア製の地対空ミサイルを持っているために、人的損失を恐れて目標から300kmも離れたところから空対地ミサイルを放つに留まると言う。それでは投下する爆弾の量に限りがあり、大きな効果は見込めない。

 そもそも期限を区切って戦争するなどと言うことはありえない。終わりが明確であれば、耐えることは容易だ。地上軍が来ないのであれば、シリアのアサド大統領は防空壕の中で宴会でも開いて、90日間をやり過ごすことになろう。

 英国は早々と参加しないことを決めた。米国は明らかに及び腰だ。それはここ200年ほど続いたパックス・ブリタニカパックス・アメリカーナの終焉を意味する。今回のシリア攻撃は、アメリカが海外で行う最後の戦争になるのかも知れない。

1960年に世界のGDP4割を占めていた米国のGDP2012年には2割に低下した。一方、1960年に1割でしかなかったアジアのGDP 2012年には3割にまで増えた。そして今後も増加しよう。

アジアの経済成長によって西欧の影響力は大きく減少した。このことは、西欧の影響を排すことに腐心したラーマ4世や5世、また幕末や明治の日本人が見れば喜ばしい限りだ。「我が子孫よ、よく頑張った」と言って、手をたたいて喜んでくれるに違いない。

しかし、一方的に喜ぶわけにもいかない。それは、警察官がいなくなると秩序を守らなくなると言う習性を人間が持っているためだ。ずいぶん勝手な所もあったが、これまでは米国と言う警察官がいたためにアジアの秩序は守られていた。しかし、警察官は疲れてしまい、もう海外へは行きたくないと言っている。

現在、東アジアと東南アジアはおおむね平和を享受している。しかし、これからも平和が長く続くという保証はどこにもない。警察官のいない時代においてはなおさらのことである。ちょっとした偶発的な出来事によって、平和がもろくも壊れたことを人類は何度も経験している。

米国がシリアへの派兵を躊躇する姿は、日本とタイに新たな覚悟を促している。アジアのことはアジアで決めると言う、当たり前の時代が訪れようとしている。