K & S Associates

川島 & スワンモントリー アソシエイツ

วิเคราะห์สถานการณ์เครษฐกิจ สังคม และการเมืองเอเชียเป็นภาษาไทยด้วยมุมมองจากญี่ปุ่น สำหรับคนไทยโดยเฉพาะ

「中進国の罠」にはまったタイ

 海外出張が重なったためにしばらくお休みを頂いていたが、その間にタイの政治は大きく動いた。11月中旬から始まったインラック首相の退陣を求めるデモと混乱、議会の解散と来年2月の総選挙、そして民主党による選挙のボイコット。情勢はめまぐるしく変化している。

2012年のタイの一人当たりのGDP5480ドル。開発途上国を卒業して中進国の水準にある。米国が主導するG20のメンバーにもなっている。アジア通貨危機によって、一時、大きく落ち込んだものの、21世紀に入ってからは目覚ましい成長を続けている。先進になるのも、あと一歩である。そんな時に、政治が混乱し始めた。それは、経済成長の足を引っ張る可能性が高い。まさに「中進国の罠」である。

米国が主導する形で国際間の資本の移動が自由化され始めると、先進国の企業は安価な労働力を求めて、争って開発途上国に進出した。開発途上国の経済発展は先進国からの技術移転に依存する部分が多いのだが、わざわざ先進国に技術を学びに行かなくとも、先進国の方からやって来てくれる。開発途上国の経済発展は、従来に比べて各段に容易になった。近年のタイの経済成長もその恩恵を受けたとして良い。

21世紀入ってからの経済成長があまりにも順調であったために、タイの人々は経済が成長することを当たり前に思うようなった。しかし、これまでの成長はタイの人々の努力と言うよりも、先進国から技術がやって来たことに依存する部分が大きい。真似をしていれば、自然に成長できたのだ。

経済成長は良いことをもたらすだけではない。貧しい時代は、皆が等しく貧しかったのだが、経済が成長すると貧富の差が拡大する。

開発途上国の主な産業は農業である。タイも例外ではない。1970年頃のタイは農業国であった。そのタイでも工業部門やサービス部門が急成長した。近代における経済発展とは、農業国が工業国に変わることである。そして、工業部門やサービス部門は都市で発展する。

その結果、都市に住む人々が豊かになる。一方、農村に住み農業に従事していた人々は発展から取り残される。都市が豊かになるのを見て、一部の農民、特に若い世代が職を求めて都市に流入する。しかし、一般に農村の若者の教育水準は都市に比べて低いために、農村の若者は都市に出ても高い給料を貰うことができない。また、都市で部屋を借りることになるが、都市のアパート代は高い。そのために、農村出身者は都市に出ても、なかなか豊かになれない。

開発途上国が先進国入りするためには、ここに述べたような経済成長から取り残される農民や農村の若者を救済する必要がある。それが政治の安定につながる。

しかし、多くの国は経済成長から取り残される人々の救済に失敗する。アジア諸国より一足先に経済成長を始めた南米諸国がその典型である。東京の次にオリンピックが開かれたのはメキシコであるが、当時、メキシコは日本と同じように直ぐにも先進国入りすると思われていた。しかし、メキシコは先進国入りすることに失敗した。

先進国から技術や資本を導入することで、ある程度まで経済成長することは出来るのだが、メキシコは初期の成長において取り残される農民や農村出身の人々に成長の果実を分け与えることができなかった。その結果、政治が不安定化した。このような現象はメキシコだけではなく、アルゼンチンやブラジルでも見られた。

貧しい農民がたくさん存在する状況で選挙を行えば、農民の歓心を買うポピュリズム政権が出現することになる。そして、ポピュリズム政権は貧しい人々の心を捉えるために極端なバラマキ政策を行う。貧しい人々の多くが教育を受けていない。そのために、そのような人々の歓心を買おうとすれば、それはインテリが見れば馬鹿らしく見える政策にならざるを得ない。

タイはかつてアルゼンチンやブラジルが歩んだ道を歩み始めたようだ。インラック政権は極端なポピュリズム政策を行っているが、それは経済成長から取り残された貧しいい農民の歓心を得るためには当然の政策である。

野党は、それに不満であるのなら、経済成長の成果をインラック政権よりも効率的に農民に分け与える政策を提示すべきである。しかし、東京から見るところタイの民主党は農民が満足するような政策を提示することに失敗している。

インラック政権の退陣を求めてデモを行うだけでは問題は解決しない。こんなことを繰り返していれば、来年以降、タイの経済成長率は大きく鈍化することになろう。そして、先進国になる日は遠のくことになる

タイは「経済成長の結果として貧富の差が拡大し、それを克服できないために政治が不安定化して成長が鈍化する」と言う「中進国の罠」にはまってしまったようだ。東京から見ていると心配でならない。