K & S Associates

川島 & スワンモントリー アソシエイツ

วิเคราะห์สถานการณ์เครษฐกิจ สังคม และการเมืองเอเชียเป็นภาษาไทยด้วยมุมมองจากญี่ปุ่น สำหรับคนไทยโดยเฉพาะ

ダムと自然破壊

 チャオプラヤ川の上流に建設予定の洪水防止ダム建設に反対運動が起きている。日本でも1990年代からダムに対する反対運動が激化したが、タイでも同様の現象が起こり始めたようだ。

 これまでにも、ダムによって水没する村の住民が反対運動を展開することはあったが、近年のダム反対運動は自然破壊の保護を旗印に掲げて、広範な住民を巻き込んだものになっている。また、ダム建設を税金の無駄遣いとする見方も強くなった。

 水没する村の人々以外が、ダムに反発する現象は、1990年頃までは強くなかった。それは、ダム建設によって得られる発電、利水、そして洪水防止機能が、一部の村が水没して住民が故郷を失うことよりもより多くの利益を伴っていると考えられていたからだろう。

 しかし、日本では1970年頃からコメは生産過剰になり、また、既に多くのダムが作られたことから、渇水期でも水に困ることはなくなった。そして、火力発電の普及により電気にも困らなくなった。

 現在、ダムに期待される主な機能は洪水防止である。しかし、大洪水は数十年に一回しか起こらないものも多く、そうなると本当にダムが洪水防止に必要なものなのか、住民を説得することが困難になった。多くの国民は、国土交通省や土建業者が仕事欲しさのために、ダムを作り続けていると感じている。そのような感情が、ダム反対運動の根底にある。

 多くの開発途上国では、ダム建設は歓迎される。それは電力をもたらし、農業用水や飲料水を確保し、かつ洪水を防止するからである。タイで今回ダム建設に対する反対運動が起こったが、それは農業用水の安定的な確保が重要ではなくなったことを示している。それはタイが先進国なった証拠である。喜ぶべき現象なのだ。

 このような問題に対しては、時間をかけて住民や反対運動を展開する人々と対話を繰り返す他ない。ぜひ、合意形成のための議論を深めて欲しい。そして、合意形成がいかに難しいものであるかを実感して欲しい。

 真の民主主義には無駄な議論の繰り返しが必要である。そして、長い目で見れば、その無駄な議論が大きな無駄(戦争や文革のような混乱、ソ連型の硬直化した経済、官僚の無駄遣い)を避けることにつながる。タイがこの問題をどのように処理するのか、日本から静かに見守りたいと思う。