K & S Associates

川島 & スワンモントリー アソシエイツ

วิเคราะห์สถานการณ์เครษฐกิจ สังคม และการเมืองเอเชียเป็นภาษาไทยด้วยมุมมองจากญี่ปุ่น สำหรับคนไทยโดยเฉพาะ

農工間格差 アジア型経済発展の宿命

 アジアの経済や政治を理解する上でキーポイントになる農業部門と工業部門の格差(農工間格差)について述べたい。このことは前回述べた日本の選挙制度が極めて不公平になっている理由を考える上で重要である。また、今後のタイの経済や政治を考える上でもキーポイントになっている。

 アジアにおけるが経済発展とは、農業国が工業国になることに他ならない。今日では工業と共にサービス産業も重要であるが、これらの産業は都市で発達する。

ついこの前まで、アジアの国々は「農民国家」と言ってもよい状態にあった。農業以外にはめぼしい産業がなかったのだ。そのような国が西欧のアジアへの進出により急速な近代化を迫られた。日本の明治維新もタイのラーマ5世による改革も、西欧の進出がなかったなら起こらなかったことであろう。

日本は明治維新以降、つまり150年前に工業化に舵を切ったが、それが軌道に乗ったのは1960年代以降のことだ。つまり、日本の工業化はここ50年のことに過ぎない。タイの工業化はもっと短く、ここ20年ほどの出来事である。

 工業部門の発展が軌道に乗ると、農業部門と工業部門の所得格差が明らかになる。そして、工業が都市で発達するために、格差は都市と地方の格差として現れる。

経済が発展し始めると、アジアの国でも都市に住む人々は先進国の人々と同じような生活を送るようになる。しかし、そうなっても農業が主な産業である地方の人々の生活はそれまでとあまり変わらない。つまり、発展途上国のままなのだ。

 そのために、農業も工業のように発展させなければならないと言う人が出て来る。しかし、それが上手行った例はない。その理由は、農業が人間の食料を作る産業であるためである。

人間は豊かになったからと言って、より多くの食物を食べることはない。食べる量はほぼ一定だ。つまり、人口が増えなければ食料に対する需要が増えることはない。マクロに見れば、農業部門の成長速度は人口増加速度に等しくなる。現在、日本の人口は減っている。タイの人口増加速度も急速に低下している。そんな状態で、農業が成長産業になることなどない。

 一方、工業部門では次々に新しい製品が生み出される。最初はラジオ、次にテレビ、そして洗濯機や冷蔵庫、移動手段として自転車、オートバイ、自動車、最近は携帯電話やスマートフォン。食料と異なり、次々に人々が欲しがるものが生れる。需要は簡単には低下しない。

工業部門が年率10%を超えて成長することも珍しくない。その結果、工業化が軌道に乗ると、あっと言う間に都市と農村の間に格差が生じてしまう。一つの国の中に先進国(都市)開発途上国(農村)が同居するようになる。

 アジアが経済発展するときには、必ずここに述べた現象が生じる。現在、程度の差こそあれ、アジアの国々ではこの現象が進行している。この現象を理解しないと、アジアの経済や政治を理解することはできない。日本における不平等な選挙制度もタイの黄色シャツと赤シャツの対立も、ここからその原因を理解することができよう。具体的な事例については、次回以降に述べることにする。